「毎日同じ作業の繰り返しで、本当にやりたい仕事に時間が取れない」「複数のツールを行き来するだけで、1日が終わってしまう」——そんな悩みを抱えていませんか?
フリーランスや小規模チームで働いていると、営業、制作、経理、カスタマーサポートと、やることは山ほどあるのに、人手は限られています。そんな中で「単純作業に時間を取られている」のは、本当にもったいないことです。
Zapier(ザピアー)は、そんな「繰り返しの作業」を自動化してくれるツールです。プログラミングの知識がなくても、GmailやSlack、Googleスプレッドシート、Notionなど、普段使っているツール同士を連携させて、自動的に処理を実行してくれます。
この記事では、Zapierで何ができるのか、どんな人に向いているのか、実際に使ってわかったメリットや注意点を、できるだけわかりやすく解説していきます。
Zapierの概要と基本情報
Zapierは、異なるWebアプリケーション同士を連携させて、業務を自動化できるノーコードツールです。2011年にアメリカでスタートし、現在では7,000以上のアプリと連携できるまでに成長しています。
どんなカテゴリのツールか
Zapierは「iPaaS(Integration Platform as a Service)」と呼ばれるカテゴリに属します。簡単に言えば、「複数のクラウドサービスをつなぐ橋渡し役」です。
例えば、こんなことができます:
- Gmailで特定の件名のメールを受信したら、Slackに通知
- Googleフォームに新しい回答があったら、Googleスプレッドシートに自動記録
- Twitterで特定のハッシュタグを見つけたら、Notionのデータベースに保存
- Stripeで新規決済があったら、顧客情報をCRMに自動登録
代表的なユースケース
Zapierは、業種や職種を問わず幅広く使われていますが、特に以下のような場面で活躍します:
- マーケティング:リード情報の自動収集、SNS投稿の一括管理
- 営業:見込み客の情報を自動でCRMに登録、フォローアップメールの自動送信
- カスタマーサポート:問い合わせ内容を自動でチケット化、対応状況の通知
- バックオフィス:請求書の自動生成、経費データの一元管理
- コンテンツ制作:記事公開時の自動SNS投稿、執筆依頼の自動通知
料金・対応言語・提供形態
ZapierはWebベースのサービスで、ブラウザからアクセスして利用します。モバイルアプリもiOS・Android向けに提供されており、外出先でも自動化の設定や管理ができます。
料金プラン(2025年時点)は以下の通りです:
| プラン | 月額料金(年払い) | タスク数/月 | Zap数 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Free | 無料 | 100 | 5 | 基本的な2ステップZapのみ |
| Professional | 約$29.99〜(約4,500円〜) | 750〜 | 無制限 | マルチステップZap、プレミアムアプリ対応 |
| Team | 約$103.50〜(約15,500円〜) | 2,000〜 | 無制限 | チーム共有、管理機能、優先サポート |
| Enterprise | 要問い合わせ | カスタマイズ | 無制限 | 専任サポート、高度なセキュリティ |
※為替レートや最新の料金は公式サイトでご確認ください。
タスクとは、Zapが実際に処理を実行した回数のことです。例えば「Gmailの新着メールをSlackに通知するZap」を作った場合、メールを1件処理するごとに1タスクとして消費されます。
インターフェースは英語が基本ですが、直感的な設計になっているため、英語が苦手な方でも慣れれば十分使えます。必要に応じてブラウザの翻訳機能を使うのも手です。
主な機能とできること
Zapierの中心となる概念が「Zap(ザップ)」です。Zapは、「トリガー(きっかけ)」と「アクション(実行内容)」を組み合わせた自動化ルールのことです。
基本的な仕組み
Zapは以下の3つの要素で構成されます:
- トリガー(Trigger):自動化のきっかけとなる出来事(例:新しいメールが届く、フォームに回答がある)
- アクション(Action):トリガーが発生したときに実行する処理(例:Slackに通知、スプレッドシートに記録)
- フィルター・条件分岐:特定の条件を満たした場合のみ実行(例:件名に「緊急」が含まれる場合のみ通知)
主な機能一覧
Zapierには、以下のような機能があります:
- マルチステップZap:1つのトリガーから複数のアクションを実行(有料プランのみ)
実務での使い方:問い合わせフォーム送信時に「Gmailで通知」「Googleスプレッドシートに記録」「Slackでチームに共有」を同時実行 - フィルター機能:条件に合致する場合のみアクションを実行
実務での使い方:「金額が10万円以上の注文のみ」上司に通知するなど、重要な情報だけをピックアップ - Paths(条件分岐):条件によって異なるアクションを実行
実務での使い方:問い合わせ内容によって「営業チーム」「サポートチーム」など、振り分け先を自動で変更 - Delay(遅延実行):一定時間後にアクションを実行
実務での使い方:資料請求から3日後に自動でフォローアップメールを送信 - Formatter(データ加工):日付の形式変換、テキストの整形など
実務での使い方:「2025/03/15」を「2025年3月15日」に変換してから記録 - スケジュール実行:定期的に自動でタスクを実行
実務での使い方:毎週月曜9時にGoogleスプレッドシートの週報を自動でSlackに投稿 - Webhooks:APIを使ったカスタム連携
実務での使い方:独自開発のシステムとZapierを連携させて、柔軟な自動化を実現 - AI機能(Zapier Central):ChatGPTなどのAIと連携して、自然言語でタスクを処理
実務での使い方:問い合わせメールの内容をAIが要約して、チームに共有
実際に触ってわかったメリット
1. プログラミング不要で誰でも自動化できる
Zapierの最大の強みは、コードを一切書かずに自動化を実現できる点です。
従来、複数のツールを連携させるには、APIの知識やプログラミングスキルが必要でした。しかしZapierなら、ドラッグ&ドロップと簡単な設定だけで、誰でも自動化ワークフローを構築できます。
「エンジニアに依頼するほどではないけれど、毎日繰り返している作業」を自動化できるのは、個人事業主や小規模チームにとって大きなメリットです。
2. 7,000以上のアプリに対応している圧倒的な連携力
Zapierは、Gmail、Slack、Googleスプレッドシート、Notion、Trello、Asana、Salesforce、HubSpot、Shopify、Stripeなど、主要なビジネスツールのほとんどに対応しています。
「今使っているツールがそのまま連携できる」というのは、導入のハードルを大きく下げてくれます。新しいツールに乗り換える必要がなく、既存の環境をそのまま活かせるのは安心感があります。
また、日本国内のサービス(Chatworkやfreeeなど)にも対応しているため、日本のビジネス環境でも使いやすいです。
3. テンプレートが豊富で、すぐに使い始められる
Zapierには、既成のテンプレート(Zap Templates)が数千種類も用意されています。
「Gmailの添付ファイルを自動でGoogle Driveに保存」「Twitterの新規フォロワーをGoogleスプレッドシートに記録」など、よくある使い方はテンプレートを選ぶだけで即座に使えます。
ゼロから設定を考える必要がないので、「まずは試してみる」というハードルが低いのも魅力です。
4. エラー通知とログ機能で安心して運用できる
自動化ツールで心配なのが「ちゃんと動いているか」ですよね。Zapierには詳細なログ機能があり、いつ、どのZapが実行されたか、エラーが起きていないかを確認できます。
もしエラーが発生した場合は、メールで通知が届くので、「気づかないうちに止まっていた」という事態を防げます。また、エラーの原因も明示されるため、修正もしやすいです。
5. 無料プランでも十分に試せる
Zapierは無料プランでも、月100タスク、5つのZapまで利用できます。
「まずは小さく始めて、効果を実感してから有料プランに移行する」という使い方ができるのは、コストに敏感な個人事業主や小規模チームにとってありがたいポイントです。
実際、「問い合わせフォームの通知を自動化する」「SNS投稿を自動でアーカイブする」といった用途なら、無料プランでも十分にカバーできます。
気になった点・注意しておきたいポイント
1. 英語インターフェースに慣れが必要
Zapierの公式画面は基本的に英語のみで提供されています。
インターフェース自体は直感的に操作できるように設計されていますが、エラーメッセージやヘルプドキュメントも英語なので、「英語が苦手」という方は最初は戸惑うかもしれません。
ただし、Google翻訳やDeepLを併用すれば、運用上のハードルは大きく下がります。また、日本語のブログ記事や解説動画も増えてきているので、学習リソースには困りません。
2. タスク数の管理が必要
Zapierの料金は「タスク数」で決まります。
例えば、「Gmailの新着メールをSlackに通知するZap」を作った場合、メール1件ごとに1タスクとして消費されます。もしメールが毎日50件届くなら、月に約1,500タスク必要になります。
無料プランは月100タスクまでなので、あっという間に上限に達してしまう可能性があります。導入前に「どれくらいのタスク数が発生するか」を見積もっておくことが大切です。
3. リアルタイム性に限界がある
Zapierは基本的に「数分ごとに新しいデータをチェックする」仕組みです(ポーリング方式)。
つまり、トリガーが発生してから実際にアクションが実行されるまで、数分〜15分程度のタイムラグが生じることがあります。
「リアルタイムで即座に通知したい」という用途には向いていません。ただし、一部のアプリは「Instant Trigger(即時トリガー)」に対応しており、ほぼリアルタイムで動作します。
4. 複雑な処理には向いていない
Zapierはシンプルな自動化には強いですが、複雑なロジックや大量データの処理には不向きです。
例えば、「数千行のスプレッドシートを一括処理する」「複雑な計算を行う」といった用途には、専門のツールやプログラミングの方が適しています。
Zapierは「繰り返しの単純作業を自動化する」ためのツールと割り切って使うのが良いでしょう。
5. 料金が積み重なる可能性
便利だからといって、あれもこれもZapを作っていると、タスク数がどんどん増えて、料金が高額になる可能性があります。
定期的にZapの使用状況を見直し、「本当に必要な自動化か」「もっと効率的な方法はないか」を確認することが大切です。
類似ツールとの比較
Zapierと似た機能を持つツールに、Make(旧Integromat)、Microsoft Power Automate、IFTTTなどがあります。それぞれの違いを簡単に整理しておきましょう。
Make(メイク、旧Integromat)
Makeは、Zapierと同様のワークフロー自動化ツールですが、ビジュアルエディタが特徴です。フローチャート形式で処理を組み立てられるため、複雑なロジックも視覚的に理解しやすいです。
こんな人におすすめ:
- 複雑な条件分岐や処理を組みたい人
- データ加工や変換を細かくコントロールしたい人
- Zapierより低コストで始めたい人(無料プランの範囲が広い)
Zapierがおすすめな人:
- シンプルな自動化で十分な人
- テンプレートを使ってすぐに始めたい人
- 対応アプリの多さを重視する人
Microsoft Power Automate
Power Automateは、Microsoft 365との連携に強みを持つ自動化ツールです。
こんな人におすすめ:
- すでにMicrosoft 365(Outlook、Teams、SharePointなど)を使っている企業
- 社内システムとの連携を重視する人
- Microsoft製品のエコシステム内で完結させたい人
Zapierがおすすめな人:
- Google Workspace(Gmail、Googleスプレッドシートなど)をメインに使っている人
- 多様なSaaSツールを組み合わせて使っている人
- Microsoft以外のツールとも柔軟に連携したい人
IFTTT(イフト)
IFTTTは、シンプルな「If This Then That(もし〇〇なら、△△する)」形式の自動化ツールです。
こんな人におすすめ:
- IoTデバイス(スマートホームなど)との連携を重視する人
- 個人利用で、シンプルな自動化だけで十分な人
- 無料で軽く試したい人
Zapierがおすすめな人:
- ビジネス用途で使いたい人
- 複数ステップの複雑な自動化を構築したい人
- ビジネスツールとの連携を重視する人
Zapierがハマる具体的なワークフロー例
ここでは、Zapierを使った実用的なワークフロー例を2パターン紹介します。
パターン1:問い合わせ対応の自動化
シーン:Webサイトに問い合わせフォームを設置しているが、対応が属人化していて、対応漏れが心配。
Zapの構成:
- トリガー:Googleフォームに新しい回答がある
- アクション1:Gmailで担当者にメール通知
- アクション2:Googleスプレッドシートに回答内容を自動記録
- アクション3:Slackの#customer-supportチャンネルに通知
- アクション4:Trelloに新しいカードを作成(タスク管理)
効果:
- 問い合わせが来た瞬間にチーム全体に共有される
- 対応履歴がスプレッドシートに自動蓄積される
- タスク化されるので、対応漏れを防げる
パターン2:SNS投稿の自動アーカイブ&分析
シーン:複数のSNSで情報発信しているが、投稿内容の管理や効果測定ができていない。
Zapの構成:
- トリガー:Twitterで新しいツイートを投稿
- アクション1:NotionのSNS投稿データベースに自動保存(日時、内容、リンク)
- アクション2:Googleスプレッドシートにも記録(分析用)
- アクション3:1週間後にリマインダーをSlackに送信(効果測定を促す)
効果:
- 投稿内容が自動でアーカイブされる
- 過去の投稿を振り返りやすくなる
- データを分析して、次の戦略に活かせる
まとめ:どんな人がZapierを選ぶべきか
最後に、Zapierが「おすすめな人」と「おすすめしない人」を整理しておきます。
Zapierがおすすめな人
- 毎日繰り返している単純作業を減らしたい人(データ入力、通知、ファイル整理など)
- 複数のツールを使っていて、手作業で情報を転記している人
- プログラミングができないけれど、自動化を実現したい人
- 個人事業主や小規模チームで、時間と人手に限りがある人
- GmailやSlack、Googleスプレッドシート、Notionなど、メジャーなツールを使っている人
- まずは無料で試してみたい人
Zapierがおすすめでない人
- リアルタイム性が求められる業務を自動化したい人(数分の遅延が許容できない場合)
- 複雑なロジックや大量データの処理が必要な人(プログラミングや専門ツールの方が適している)
- 英語が苦手で、日本語サポートが必須な人(ただし、翻訳ツールを使えば運用可能)
- Microsoft 365をメインに使っている企業(Power Automateの方が統合しやすい)
- 予算がほとんどなく、無料の範囲で複雑な自動化をしたい人(Makeの方が無料枠が広い)
最後に
Zapierは、「手作業を減らして、本当に大事な仕事に集中したい」と考えている人にとって、強力な味方になってくれるツールです。
プログラミング不要で、誰でも簡単に自動化を始められるのが最大の魅力。まずは無料プランで小さく試してみて、「これは便利だ」と感じたら、有料プランに移行するのが良いでしょう。
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