ゴールと前提条件
このワークフローで実現すること
このワークフローでは、企業が契約している複数のSaaS・サブスクリプションサービスの管理業務を自動化します。具体的には以下の業務を効率化します。
- 新規SaaS契約の登録と承認フロー
- 契約更新日の自動通知とリマインド
- 月次コストの集計と予算管理
- 利用状況のモニタリングと無駄な契約の可視化
- 解約手続きの記録と管理
多くの企業では、各部署が個別にSaaSを契約した結果、全社でどのサービスに月額いくら支払っているか把握できていません。また、使われていないサービスに毎月コストが発生し続けているケースも少なくありません。
このワークフローを導入することで、SaaS契約の一元管理と可視化が実現し、年間で数十万円から数百万円のコスト削減が期待できます。
前提条件
このワークフローを実装するには、以下のツールとアカウントが必要です。
- Notionのワークスペース(無料プランでも可)
- Makeのアカウント(旧Integromat、無料プランでも可)
- Googleスプレッドシートのアクセス権
- Slackのワークスペース(無料プランでも可)
また、経理部門または管理部門がSaaS契約情報を一元管理する権限を持っていることが望ましいです。
全体フローの俯瞰図
このワークフローは以下の4つのステージで構成されています。
- トリガー:新規契約の申請または更新日の到来
Notionデータベースに新しいSaaS契約情報が登録される、または契約更新日の7日前・3日前・当日に自動実行されます。 - 情報整理:契約データの集約と計算
MakeがNotionデータベースから契約情報を取得し、月次コストの合計、部署別の支出、契約ステータスなどを計算してGoogleスプレッドシートに記録します。 - 判定・通知:アラートの生成
契約更新日が近づいている場合、予算を超過している場合、長期間利用されていないサービスがある場合などに、適切な担当者へSlackで通知します。 - 記録・可視化:ダッシュボードの更新
すべての契約情報とコスト分析結果をNotionとGoogleスプレッドシートで可視化し、経営層や管理者がいつでも確認できる状態を維持します。
これにより、「気づいたら契約更新されていた」「誰も使っていないサービスに毎月支払っていた」といった問題を防ぐことができます。
使用するツールと役割
Notion:契約情報の一元管理データベース
Notionは、すべてのSaaS契約情報を管理する中央データベースとして機能します。
主な役割:
- 契約中のSaaS一覧の管理(サービス名、契約日、更新日、月額費用、年額費用、担当部署、利用人数など)
- 契約ステータスの管理(契約中、更新検討中、解約予定、解約済み)
- 承認フローの管理(申請者、承認者、承認ステータス)
- 利用状況のメモ記録(最終利用日、利用頻度、活用度評価)
Notionのデータベース機能を活用することで、フィルタリング、ソート、ビュー切り替えが簡単にでき、視覚的に契約状況を把握できます。
Make:自動化の司令塔
Makeは、Notion、Googleスプレッドシート、Slackの間でデータを連携し、自動処理を実行する役割を担います。
主な役割:
- Notionデータベースの定期的な監視(毎日1回実行)
- 契約更新日が近づいている契約の抽出
- 月次コストの自動計算と集計
- Googleスプレッドシートへのデータ書き込み
- 条件に応じたSlack通知の送信
Makeのビジュアルエディタを使うことで、プログラミング知識がなくても複雑な自動化フローを構築できます。
Googleスプレッドシート:データ分析とレポート生成
Googleスプレッドシートは、数値データの集計、分析、グラフ化を担当します。
主な役割:
- 月次・年次のSaaSコスト推移の記録
- 部署別・カテゴリ別の支出分析
- 予算との比較と超過アラート
- グラフとピボットテーブルによる可視化
- 経営層向けレポートの自動生成
スプレッドシートの強力な関数とグラフ機能を活用することで、データドリブンな意思決定が可能になります。
Slack:リアルタイム通知とコミュニケーション
Slackは、重要なイベントをリアルタイムで関係者に通知する役割を果たします。
主な役割:
- 契約更新日が近づいた際のリマインド通知
- 新規契約申請の承認依頼通知
- 月次コストサマリーの定期配信
- 予算超過アラートの緊急通知
- 長期未使用サービスの確認依頼
Slackに通知を集約することで、メールに埋もれることなく確実に情報が届きます。
手順詳細(ステップバイステップ)
STEP 1:Notionでサブスクリプション管理データベースを作成
まず、Notionでサブスクリプション管理用のデータベースを作成します。
実装手順:
- Notionで新しいページを作成し、「データベース – テーブル」を選択します。
- データベース名を「SaaS契約管理」などに設定します。
- 以下のプロパティ(列)を追加します:
| プロパティ名 | タイプ | 説明 |
|---|---|---|
| サービス名 | タイトル | SaaSの名称(例:Slack、Notion、Zoom) |
| カテゴリ | セレクト | コミュニケーション、生産性、マーケティング、開発など |
| 契約日 | 日付 | サービスの契約開始日 |
| 更新日 | 日付 | 次回の契約更新日 |
| 契約周期 | セレクト | 月額、年額 |
| 月額費用 | 数値 | 月額コスト(円) |
| 年額費用 | 数値 | 年額コスト(円) |
| 担当部署 | セレクト | 営業部、マーケティング部、開発部など |
| 担当者 | ユーザー | 契約管理責任者 |
| 利用人数 | 数値 | 実際に使用しているユーザー数 |
| ステータス | セレクト | 契約中、更新検討中、解約予定、解約済み |
| 承認ステータス | セレクト | 未承認、承認済み、却下 |
| 最終利用日 | 日付 | 最後に使用された日付 |
| 公式URL | URL | サービスの公式サイトリンク |
| メモ | テキスト | 利用状況や特記事項 |
つまづきポイント:
- 月額費用と年額費用の両方を記録しておくと、後で集計が楽になります。年額契約の場合は「年額費用 ÷ 12」で月額換算値を自動計算する式を設定しましょう。
- 「更新日」は必ず入力するようにしてください。この日付を基準に自動通知が発動します。
STEP 2:Googleスプレッドシートで集計シートを準備
次に、Googleスプレッドシートで契約データを集計・分析するためのシートを作成します。
実装手順:
- Googleスプレッドシートで新しいスプレッドシートを作成し、「SaaS契約管理ダッシュボード」と名前を付けます。
- 以下の3つのシートを作成します:
① 契約一覧シート
Notionから取得した全契約データを記録するシートです。列は以下の通り:
- A列:サービス名
- B列:カテゴリ
- C列:契約日
- D列:更新日
- E列:月額費用
- F列:年額費用
- G列:担当部署
- H列:ステータス
- I列:最終利用日
② 月次集計シート
月ごとのコスト推移を記録するシートです:
- A列:年月(2025年1月、2025年2月…)
- B列:総コスト
- C列:新規契約数
- D列:解約数
- E列:契約中サービス数
③ 部署別集計シート
部署ごとの支出を集計するシートです:
- A列:部署名
- B列:契約数
- C列:月額コスト合計
- D列:予算
- E列:予算との差額
- 月次集計シートと部署別集計シートには、契約一覧シートのデータを参照する数式を設定します。
例:月次集計シートのB2セルに以下の数式を入力すると、契約一覧シートの月額費用合計が自動計算されます。
=SUMIF(契約一覧!H:H,"契約中",契約一覧!E:E)
つまづきポイント:
- Makeから書き込むデータの範囲を事前に決めておきましょう。「契約一覧シート」のA2セルから書き込み開始、など明確にしておくと後の設定がスムーズです。
- 数式は相対参照と絶対参照を使い分けることで、データが増えても正しく集計されるようにしましょう。
STEP 3:Makeでワークフロー自動化シナリオを構築
ここからが自動化の核心部分です。Makeで複数のシナリオを作成します。
シナリオ①:契約更新リマインド通知
目的:契約更新日が近づいているSaaSをSlackで通知する
実装手順:
- Makeにログインし、「Create a new scenario」をクリックします。
- シナリオ名を「SaaS契約更新リマインド」と設定します。
- 以下のモジュールを追加して接続します:
モジュール構成:
【1】Schedule(スケジュールトリガー)
- 実行頻度:毎日午前9時
- このモジュールで自動実行のタイミングを設定します。
【2】Notion – Search Objects
- Database ID:STEP 1で作成したNotionデータベースのIDを指定
- Filter:「ステータス = 契約中」かつ「更新日 <= 今日から7日後」
- この条件で、更新日が7日以内に到来する契約を抽出します。
【3】Iterator(イテレータ)
- 前のモジュールで取得した複数の契約を1件ずつ処理するために使用します。
【4】Slack – Create a Message
- Channel:#saas-management(専用チャンネルを作成しておきます)
- Message Text:以下のようなメッセージを設定します。
📅 契約更新日が近づいています
サービス名:{{サービス名}}
更新日:{{更新日}}
月額費用:{{月額費用}}円
担当部署:{{担当部署}}
担当者:@{{担当者}}
継続する場合は特に対応不要です。
解約を検討する場合は、更新日の3日前までに手続きを開始してください。
- 「Save」をクリックしてシナリオを保存し、「Run once」でテスト実行します。
- 問題なければ「Scheduling」をONにして自動実行を有効化します。
つまづきポイント:
- NotionデータベースのIDは、NotionでデータベースのURLをコピーすると確認できます。URLの「?v=」の前の部分が32文字の英数字になっています。
- 日付の比較フィルタは、Makeの「Date/Time」関数を使って「今日から7日後」を計算する必要があります。具体的には「addDays(now, 7)」という式を使います。
- Slackでメンション(@担当者)を飛ばすには、NotionのユーザープロパティとSlackのユーザーIDをマッピングする必要があります。手動でIDを調べるか、Slack APIで取得しましょう。
シナリオ②:月次コスト集計とレポート配信
目的:毎月1日にSaaSコストを集計し、レポートをSlackで配信する
実装手順:
- 新しいシナリオを作成し、「月次SaaSコスト集計レポート」と名前を付けます。
- 以下のモジュールを追加します:
モジュール構成:
【1】Schedule
- 実行頻度:毎月1日の午前10時
【2】Notion – Search Objects
- Database ID:SaaS契約管理データベース
- Filter:「ステータス = 契約中」
- すべての契約中サービスを取得します。
【3】Aggregator(集計モジュール)
- Source Module:前のNotionモジュール
- Aggregated field:「月額費用」
- Aggregation function:SUM(合計)
- 契約中のすべてのサービスの月額費用を合計します。
【4】Google Sheets – Update a Row
- Spreadsheet:STEP 2で作成したスプレッドシート
- Sheet:月次集計シート
- Row:新しい行を追加
- Values:年月(今月)、総コスト(集計結果)、契約数など
【5】Slack – Create a Message
- Channel:#saas-management
- Message Text:
📊 月次SaaSコストレポート({{今月}})
総コスト:¥{{総コスト}}
契約中サービス数:{{契約数}}件
前月比:{{増減}}
詳細はスプレッドシートで確認できます:
{{スプレッドシートURL}}
予算超過がある部署は至急確認をお願いします。
- シナリオを保存し、テスト実行して動作確認します。
- 「Scheduling」をONにします。
つまづきポイント:
- Aggregatorモジュールは初めて使うと設定が難しく感じるかもしれません。「Source Module」で集計対象のデータを選び、「Aggregated field」で集計する列を指定するという流れを理解しましょう。
- Google Sheetsへの書き込みで「Row not found」エラーが出る場合、シートの1行目にヘッダー行があることを確認してください。
- 前月比の計算は、Google Sheetsの数式で対応する方が簡単です。Makeで無理に計算しようとせず、シートに書き込んだ後に数式で自動計算させましょう。
シナリオ③:新規契約の承認フロー
目的:Notionに新規SaaS契約が申請されたら、承認者にSlackで通知する
実装手順:
- 新しいシナリオを作成し、「新規SaaS契約承認フロー」と名前を付けます。
- 以下のモジュールを追加します:
モジュール構成:
【1】Notion – Watch Database Items
- Database ID:SaaS契約管理データベース
- Trigger:新しいアイテムが追加された時
- このトリガーは、Notionデータベースに新しい行が追加されると即座に発火します。
【2】Router(ルーター)
- 条件分岐を設定します。「承認ステータス = 未承認」の場合のみ次に進みます。
【3】Slack – Create a Message
- Channel:#saas-approval(承認専用チャンネル)
- Message Text:
🆕 新規SaaS契約の承認依頼
サービス名:{{サービス名}}
カテゴリ:{{カテゴリ}}
月額費用:{{月額費用}}円
年額費用:{{年額費用}}円
申請部署:{{担当部署}}
申請者:{{担当者}}
理由:{{メモ}}
承認する場合は、Notionで「承認ステータス」を「承認済み」に変更してください。
{{NotionページURL}}
- シナリオを保存し、「Scheduling」をONにします。
つまづきポイント:
- 「Watch Database Items」トリガーは、シナリオを有効化した後に追加されたアイテムのみを検知します。過去のデータは対象外なので注意してください。
- Slackメッセージに直接「承認」「却下」ボタンを付けたい場合は、Slack APIの「Block Kit」を使う必要があります。少し高度な設定になるため、最初はシンプルにNotionで直接ステータスを変更する運用がおすすめです。
シナリオ④:長期未使用サービスのアラート
目的:90日間使用されていないSaaSを検出し、確認依頼を送る
実装手順:
- 新しいシナリオを作成し、「長期未使用SaaSアラート」と名前を付けます。
- 以下のモジュールを追加します:
モジュール構成:
【1】Schedule
- 実行頻度:毎週月曜日の午前10時
【2】Notion – Search Objects
- Database ID:SaaS契約管理データベース
- Filter:「ステータス = 契約中」かつ「最終利用日 < 90日前」
【3】Iterator
【4】Slack – Create a Message
- Channel:担当者へのDM(または #saas-management)
- Message Text:
⚠️ 長期未使用のSaaSが検出されました
サービス名:{{サービス名}}
最終利用日:{{最終利用日}}({{経過日数}}日前)
月額費用:{{月額費用}}円
担当部署:{{担当部署}}
現在も利用していますか?
利用していない場合は、解約を検討してください。
最終利用日を更新する、またはステータスを「解約予定」に変更してください:
{{NotionページURL}}
- シナリオを保存し、有効化します。
つまづきポイント:
- 「最終利用日」は手動で更新する運用になります。完全自動化するには各SaaSのAPIから利用状況を取得する必要がありますが、すべてのサービスがAPIを提供しているわけではないため、現実的には四半期ごとに担当者に確認してもらう運用がおすすめです。
- 経過日数の計算は、Makeの「Date/Time」関数を使います。「{{now}} – {{最終利用日}}」で日数差を計算できます。
STEP 4:Slackチャンネルとワークスペースの設定
通知を適切に配信するために、Slackのチャンネル設定を行います。
実装手順:
- Slackで以下の専用チャンネルを作成します:
- #saas-management:契約更新リマインド、月次レポート、一般的な通知
- #saas-approval:新規契約の承認依頼専用
- #saas-alerts:予算超過、長期未使用などの緊急アラート専用
- 各チャンネルの説明文に「このチャンネルは自動通知専用です」と記載し、関係者を招待します。
- Makeとの連携のため、SlackアプリをMakeのワークスペースに追加します。Makeの設定画面で「Add a webhook」を選択すると、連携手順が表示されます。
つまづきポイント:
- Slackの通知が多すぎて逆に見落とされる場合は、チャンネルごとに通知レベルを設定しましょう。「#saas-alerts」は必ず通知、「#saas-management」はメンション時のみ通知、など調整できます。
- 特定の担当者にDMを送りたい場合は、MakeでSlackユーザーIDを取得する必要があります。SlackのプロフィールURLから確認できます。
STEP 5:運用ルールの策定とチームへの共有
自動化の仕組みを構築しただけでは不十分です。チーム全体で運用ルールを共有し、データを正確に保つことが重要です。
策定すべき運用ルール:
- 新規契約時のルール
- 新しいSaaSを契約する前に、必ずNotionデータベースに申請を登録する
- 承認者(情報システム部長、経理部長など)の承認を得てから契約する
- トライアル期間の終了日も記録し、自動課金前に判断する
- 更新時のルール
- 契約更新の7日前に通知が来たら、継続の可否を判断する
- 継続しない場合は、更新日の3日前までに解約手続きを完了する
- Notionのステータスを「解約予定」に変更し、解約完了後に「解約済み」にする
- 定期レビューのルール
- 月次レポートを確認し、予算内に収まっているかチェックする
- 四半期ごとに全契約をレビューし、「最終利用日」を更新する
- 年次で契約の見直しを行い、より安価なプランや代替サービスを検討する
- データ更新のルール
- プラン変更、料金改定があった場合は即座にNotionを更新する
- 担当者の異動があった場合は、新担当者に引き継ぐ
- 利用人数が変わった場合も記録を更新する
これらのルールを社内Wikiやハンドブックに記載し、関係者全員がアクセスできるようにしましょう。
つまづきポイント:
- 運用ルールが浸透するまでは、定期的にリマインドが必要です。最初の3ヶ月は月次ミーティングで運用状況を確認し、問題点があれば改善しましょう。
- 「承認フロー」を厳格にしすぎると業務が滞ります。緊急性の高い契約は事後承認を認めるなど、柔軟な運用を心がけてください。
自動化前後でどう変わるか(ビフォーアフター)
ビフォー(自動化前)の状況
作業時間:
- 各部署が個別にSaaSを契約し、情シスや経理は全体像を把握できていない
- 月次で契約状況を確認するために、各部署にヒアリングして回る(月4〜8時間)
- 契約更新のタイミングを忘れて自動更新され、解約のタイミングを逃す
- 年度末に契約を棚卸しするが、Excelシートが複数存在し、どれが最新か不明
- 予算管理がリアルタイムでできず、月末にならないと超過に気づけない
問題点:
- 使われていないサービスに年間数十万円〜数百万円のコストが発生
- 同じ機能のSaaSを複数部署が別々に契約し、コストが重複
- 契約更新のタイミングで交渉できず、値上げをそのまま受け入れる
- セキュリティリスク(退職者のアカウントが残ったまま、など)
アフター(自動化後)の状況
作業時間:
- 契約状況の確認:月30分程度(Notionダッシュボードを見るだけ)
- 月次レポートの作成:自動生成されるため0時間
- 契約更新の判断:Slackで通知が来るため見落としゼロ
- 予算管理:リアルタイムでスプレッドシートに反映されるため、いつでも確認可能
改善効果:
- 作業時間:月7.5時間削減(月8時間 → 0.5時間)
- コスト削減:年間で平均20〜30%のSaaS支出を削減(未使用サービスの解約、重複契約の統合により)
- 見落とし防止:契約更新の見落としがゼロに(自動リマインドにより)
- 意思決定の質向上:データドリブンな判断が可能に(リアルタイムのダッシュボードにより)
具体例:あるスタートアップ企業の事例
従業員50名のスタートアップ企業が、このワークフローを導入した結果:
- 導入前:月間SaaSコスト 約80万円(契約サービス数:45個)
- 導入後:月間SaaSコスト 約56万円(契約サービス数:32個)
- 削減額:月24万円、年間288万円のコスト削減
削減の内訳:
- 3ヶ月以上使われていなかったサービスを7個解約:月12万円削減
- 複数部署で重複契約していたプロジェクト管理ツールを統合:月8万円削減
- 年額契約への切り替えで割引適用:月4万円削減
応用・拡張アイデア
アイデア1:ChatGPT APIで契約更新の判断支援
MakeのシナリオにChatGPT APIモジュールを追加することで、契約継続の判断を支援できます。
実装方法:
- Notionから契約情報と利用状況を取得
- ChatGPT APIに以下のプロンプトを送信:
以下のSaaS契約について、継続すべきか解約すべきか判断してください。 サービス名:{{サービス名}} 月額費用:{{月額費用}}円 契約期間:{{契約日からの経過月数}}ヶ月 最終利用日:{{最終利用日}} 利用人数:{{利用人数}}名 利用状況メモ:{{メモ}} 判断基準: - 90日以上使われていない場合は解約推奨 - 費用対効果が低い場合は代替案を提示 - 利用人数が少なすぎる場合はプラン変更を提案 出力形式: 判断:継続 / 解約検討 / プラン変更 理由:(簡潔に) - AIの判断結果をSlack通知に含める
これにより、人間が最終判断を下す前に、AIによる客観的な分析結果を参考にできます。
アイデア2:契約書のPDF管理をGoogle Driveと連携
SaaS契約の利用規約や契約書PDFをGoogle Driveで一元管理し、Notionからリンクする仕組みを追加できます。
実装方法:
- Google Driveに「SaaS契約書」フォルダを作成
- 各サービスごとにサブフォルダを作成(例:「Slack」「Notion」など)
- Notionデータベースに「契約書URL」プロパティを追加し、Google DriveのファイルURLをリンク
- Makeで契約更新通知を送る際に、契約書PDFのリンクも含める
これにより、契約内容を確認したい時にすぐにアクセスでき、更新判断がスムーズになります。
アイデア3:ライセンス管理とアカウント棚卸しの自動化
SaaSのユーザーアカウント管理を追加して、「誰がどのサービスを使っているか」まで可視化できます。
実装方法:
- Notionに「ユーザー管理」データベースを新規作成
- プロパティ:社員名、メールアドレス、所属部署、利用中のSaaSリスト(リレーション)
- Makeで社員の入退社情報(例:Google Workspace管理コンソールやSlackのユーザー情報)と連携
- 退職者が出た際に、その社員が利用していたSaaSアカウントの削除リストを自動生成してSlack通知
これにより、退職者のアカウントが放置されるセキュリティリスクを防げます。
アイデア4:予算管理と承認フローの高度化
部署ごとに年間予算を設定し、予算超過前に自動的にアラートを出す仕組みを追加できます。
実装方法:
- Googleスプレッドシートの「部署別集計シート」に「年間予算」列を追加
- Makeで毎月の実績を予算と比較し、80%・90%・100%のタイミングでアラート
- 予算超過している部署には、新規契約申請を一時停止する承認ルールを設定
アイデア5:SaaS管理専門ツールとの連携
より高度な管理を求める場合は、SaaS管理専門ツール(JOSYS、Toriiなど)と連携することも検討できます。
これらのツールはSaaSの利用状況を自動で収集し、より詳細な分析が可能です。Makeを使ってこれらのツールからデータを取得し、Notionに統合することで、完全な一元管理を実現できます。
よくある質問・つまづきポイントQ&A
Q1:Makeのトリガーが発火しない
A:以下の点を確認してください。
- シナリオのスケジューリングがONになっているか
- Notionデータベースとの接続が有効か(「Test connection」で確認)
- Notionのフィルタ条件が正しく設定されているか(日付の形式に注意)
- Makeの無料プランでは実行回数に制限があるため、上限に達していないか確認
Q2:Slack通知が届かない
A:以下を確認してください。
- SlackとMakeの連携が正しく設定されているか
- 送信先のチャンネル名が正確か(#を含む形式で指定)
- Makeのログを確認し、エラーメッセージがないかチェック
- Slackアプリの権限が不足していないか(チャンネルへの投稿権限が必要)
Q3:Googleスプレッドシートへの書き込みでエラーが出る
A:よくあるエラーと対処法:
- 「Spreadsheet not found」:スプレッドシートのIDが間違っている。URLの「/d/」と「/edit」の間の文字列が正しいIDです。
- 「Row not found」:シートの1行目にヘッダー行がない、またはシート名が間違っている。
- 「Permission denied」:MakeとGoogle Sheetsの連携で権限が不足している。再接続して「編集権限」を付与してください。
Q4:契約更新日の通知が早すぎる/遅すぎる
A:Makeのフィルタ条件で通知タイミングを調整できます。
- 7日前通知:「更新日 <= addDays(now, 7) AND 更新日 >= addDays(now, 6)」
- 3日前通知:「更新日 <= addDays(now, 3) AND 更新日 >= addDays(now, 2)」
- 当日通知:「更新日 = formatDate(now, ‘YYYY-MM-DD’)」
複数のタイミングで通知したい場合は、Routerモジュールで条件分岐を追加しましょう。
Q5:Notionデータベースが大きくなりすぎて重い
A:解約済みの契約は別のアーカイブデータベースに移動しましょう。
- 「解約済み契約アーカイブ」データベースを新規作成
- Makeで「ステータス = 解約済み」かつ「解約日から6ヶ月以上経過」した契約を自動的にアーカイブデータベースに移動
- これにより、メインデータベースは契約中と解約予定のみになり、動作が軽快になります
Q6:チームメンバーがNotionの更新を忘れる
A:運用ルールの徹底と定期リマインドが重要です。
- Makeで「最終利用日が3ヶ月以上前」の契約を自動検出し、担当者にSlackでリマインド
- 月次ミーティングで「Notionの更新漏れ」をアジェンダに追加
- 四半期ごとに全件レビューを実施し、データの正確性を保つ
Q7:複数の通貨(USD、EUR、JPYなど)で契約している場合の処理方法
A:Notionに「通貨」プロパティを追加し、為替レートを使って円換算する方法があります。
- Notionに「通貨」(セレクト:JPY、USD、EURなど)と「原価」(数値)プロパティを追加
- Makeで為替APIから最新の為替レートを取得(例:ExchangeRate-API)
- 「月額費用(円換算)」を自動計算してGoogleスプレッドシートに記録
- これにより、複数通貨でも統一的にコスト管理できます
Q8:MakeとZapierどちらを使うべき?
A:どちらでも実装可能ですが、違いは以下の通りです。
| 項目 | Make(旧Integromat) | Zapier |
|---|---|---|
| 料金 | 無料プランで1,000オペレーション/月 | 無料プランで100タスク/月 |
| 複雑さ | 複雑なフローも視覚的に構築可能 | シンプルなフロー向け |
| 日本語サポート | 一部日本語対応 | 英語のみ |
| 学習コスト | やや高い | 低い |
今回のワークフローは複数の条件分岐やデータ集計が必要なため、Makeの方が適しています。ただし、シンプルに「Notionに新規追加されたらSlack通知」だけならZapierでも十分です。
まとめ:まずどこから着手すべきか
このワークフロー全体を一度に実装するのは大変です。段階的に導入していくことをおすすめします。
【フェーズ1】まずはデータベース構築から(1〜2週間)
- Notionで「SaaS契約管理データベース」を作成
- 現在契約中のSaaSをすべて登録(各部署にヒアリングして洗い出し)
- 最低限のプロパティ(サービス名、更新日、月額費用、担当部署)を入力
- Googleスプレッドシートで集計シートの雛形を作成
この段階では自動化は不要です。まずは「全契約の可視化」を達成することが最優先です。
【フェーズ2】契約更新リマインドの自動化(1週間)
- Slackに #saas-management チャンネルを作成
- Makeで「契約更新リマインド」シナリオを構築
- テスト実行して動作確認
- 本番運用開始
この機能だけでも、契約更新の見落としを防ぐ大きな効果があります。
【フェーズ3】月次レポートとコスト集計の自動化(1週間)
- Makeで「月次コスト集計レポート」シナリオを構築
- Googleスプレッドシートに集計データが正しく書き込まれることを確認
- 月次レポートのSlack配信を開始
ここまで実装すれば、毎月の作業時間が大幅に削減されます。
【フェーズ4】承認フローと長期未使用アラートの追加(1週間)
- 新規契約の承認フローを構築
- 長期未使用サービスの検出アラートを追加
- 運用ルールをドキュメント化し、チームに共有
ここまで実装すれば、完全な一元管理体制が完成します。
【フェーズ5】応用機能の追加(随時)
運用が軌道に乗ったら、ChatGPT APIとの連携、契約書PDF管理、ライセンス管理など、応用機能を追加していきましょう。
最初の一歩は「契約リストの作成」から
自動化の前に、まずは「今、会社全体でどのSaaSにいくら払っているのか」を正確に把握することが最も重要です。
Notionでデータベースを作り、各部署にヒアリングして全契約をリストアップしましょう。この作業だけで、「え、このサービスまだ契約してたの?」という発見があり、即座にコスト削減につながるケースも多いです。
そして、リストができたら契約更新リマインドの自動化から始めてください。小さく始めて、徐々に自動化の範囲を広げていくのが成功のコツです。
このワークフローを導入することで、あなたの会社のSaaS管理は劇的に効率化されます。まずは今日、Notionでデータベースを作るところから始めてみてください。